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(……俺、…………)
〝出さずとも〟の先を、ジークは身をもって知った。
出さずに、とは、文字通り吐精せずに達することだった。
それをあの夜、くどいくらいに叩き込まれて、終いには半ば挿れられているだけで達きっぱなしになっていた。
(あんな……あんな)
思い出す度、勝手に顔が赤くなったり蒼くなったりしてしまう。
当面はアンリの姿を見ただけで、羞恥のあまり腰が砕けそうになっていたくらいだ。
……もちろん、アンリの方はまるで何事もなかったように平然としていたけれど。
(っていうか……あれって、もしかしたらアンリさんも、発情期……だったりしたのかな……?)
就寝前、ジークはいつかのように見慣れた天井をぼんやり眺めていた。
確かにあの日のアンリは執拗だった。察しがいいとは言えないジークでもそう違和感を覚えるくらい、触れ合う肌から伝わる体温も熱かった。
挙句――。
いつもお前に付き合ってやっているのだ。たまには私に付き合え。
と、揶揄うように囁かれたあれも夢ではない……。
カヤからアンリも淫魔の血を持つと聞いてはいたものの、その確認まではできていなかった。けれども、あの日のアンリはやはりそのせいだろうとしか思えなかった。
(本当に、淫魔……なんだな、アンリさん……も……)
結局は同じ血を持つ者だから――ということなのかもしれない。
アンリからはっきり告げられたわけでもないのに、それは徐々に確信めいたものに変わっていった。
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