20.束の間の

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 *  *  *  それから二ヶ月ほどが過ぎ――。  その頃には、ジークも改めて魔法の修行に専念できるようになり、魔法使いの文字の読み書きについても、一定の水準はとっくに超えたと言われるまでになっていた。  箒に関しては努力のかいなく、依然として何一つ文字は現れていなかったものの、カヤの励ましもあってか、当人の気持ちは総じて落ち着いていた。  ……唯一、不意にあの夜のことを思い出して、一人挙動不審になることもなくはなかったが、かといってそれが発情(ヒート)の引き金になるようなこともなければ、悪戯にフェロモンが漏れ出すような事態を引き起こすこともなかった。  要するに、この二ヶ月の間、ジークは一度たりとも人を誘うことも、襲うこともなく、発情(ヒート)の兆候すら一切見せなかったということになる。  だからと言って、先日のように性欲が全くなくなった(正確には夜這いで発散していたのだが)というわけでなく、いわゆる健康的な成人男性――普通に自分で処理できる――程度のものは残っていた。  それがかえって良かったのかもしれない。  だって潜在能力覚醒の儀式を受ける前までは、ずっとその状態が当たり前だったのだから。
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