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以前カヤに相談した時は、結局話が違う方向に流れてしまったし、そもそもその時の内容は、今思い出しても顔から火が出るくらい恥ずかしい勘違いだった。
となると、それこそアンリに聞けるはずもなく、そのままになっていたのだけれど。
自分はいつ騎士団に戻れるのか。
このままアンリの薬――例えば今の――を飲んでさえいれば、淫魔としての症状は抑えられるのか。逆に飲み続けなければ平穏な日常は送れないのか。
そしてそれは、一生続くものなのか――。
考えてみれば、聞きたいことは山ほどあった。
淫魔だとか、発情期だとか。それも男なのに雌型……だとか。
突然突きつけられたそれは、いまだどこか他人事のようだったけれど、それでもちゃんと受け止めて、付き合っていかなければならない現実だということはさすがにジークも理解していた。……頭では。
* * *
食後にはいつもリュシーがその日に合わせてブレンドしたハーブティーを用意する。
そこには当たり前のようにお茶菓子も添えられており、それをアンリが一つ食べ終えるのを見届けてから、ジークは思い切って口を開いた。
翌朝のことだった。
「あ、あの――」
「失礼します」
けれども、それは半ばで掻き消され、と同時に開いたドアの前に立っていたのは、ラファエルだった。
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