20.束の間の

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「まぁ、仮にそういう魔法道具(アイテム)があったとして、どうせ使わないのだろう。お前は」 「……さすが。付き合いが長いだけのことはありますね」 「別に知りたくもないがな」 「そうなんですよね。僕は自由なギルが好きなので……」 「お前は趣味だけでなく耳も悪くなったのか」  たった今、別に知りたくないと言っただろうと冷ややかな眼差しを向けられても、ラファエルは一方的に話を続ける。 「だって囲ってしまったら面白くないじゃないですか。そりゃたまには閉じ込めてしまいたいって思うこともありますし、実際やっちゃうこともありますけど……でもほら、やっぱりギルにはギルらしくいて欲しいっていうか……」 「もう帰れ」 「アンリなら分かってくれますよね? あの人は自由だからいいんです。それで例え浮気されたって……いえ、浮気されるのは嫌ですけど、だから僕も気をつけてるんです。できるだけそうならないように……全部阻止できているとは思っていないですけど、でもそれも含めてギルだって気持ちもちゃんとあるので……」 「聞こえないのか」 「そう考えると、淫魔に誘われるっていうのもそれはそれかなって思ったりもするんですけどね。お仕置きする口実にもなりますし。でも頭の中がその相手で一杯になるっていうのだけはやっぱりいただけないなぁって――」 「…………もういい」  いつも以上に(無駄に)饒舌なラファエルに、アンリは無言で片手のひらを翳す。そして、 「菓子を忘れるなよ」  そう平板に告げたかと思うと、そのままラファエルに転移魔法を作用させ、次には家の外へと強制退去させていた。
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