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以前よりも自分の特性を理解したジークは、かえってギルベルトに申し訳ないと思っているくらいだった。一方、ギルベルトは物事を深く考えない。
ジークがヒート中でもない限り、その空気が揺らぐことはなさそうで、結果、彼らは案外気の合う友人になりそうな雰囲気すら醸し出していた。
(……それはそれで面白くないですね)
ギルベルトが笑っていれば自分も嬉しい。
そう思うのも嘘じゃないのに、素直に「お友達が増えて良かったですね」と思えない自分に苦笑してしまう。
「――やぁ、楽しそうですね」
ややしてラファエルは、まるで今来たところだという体で二人の前へと踏み出した。
「あっ、ラファエルさん」
先に反応したのはジークだった。
ラファエルは柔らかく髪を掻き上げながら、「話、終わりましたので」とふわりと微笑んだ。
「せっかくゆっくりなさっているところに、不躾なことをしてすみませんでした」
「あ、いえ……大丈夫です」
無駄のない優美な佇まいとその微笑みに、ジークは仄かに目端を染める。滑らかに揺れる白金色の髪が、陽光をきらきらと弾いていた。
その横でギルベルトが、「嘘くせ」と即座に吐き捨てる。
ラファエルはあえて天使然とした表情のまま、ギルベルトに目を遣った。
「ギル、まだいたんですね。僕を待っててくれたんですか?」
「は? 誰が」
ギルベルトは「げー」とばかりに舌を出した。
「つーか、てめぇこそ話終わったんならとっとと帰れよ。んで俺さまの菓子を早く買いに行け」
そして横柄な物言いで続けると、持っていた菓子の一つを口へと放り込む。ジークとしゃべっている間もずっと食べ続けていたのだろう。残りは早くもあと一つとなっていた。
「はいはい。まぁ約束ですからね」
ラファエルは慣れたふうに答え、苦笑気味に肩を竦めた。
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