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……仲がいいのか悪いのか……。
この二人の関係性がいまいち見えない。
思いながらも、ジークは会話が途切れた合間に口を開く。
「あの、ラファエルさん」
「はい?」
どうするべきかまだ少し迷いはあったものの、やはりせっかく得られた機会だし、と気持ちを切り替えて言葉を継いだ。
「あの……あの時」
「あの時?」
「その、す、すみませんでした……!」
言うなり、ジークはがばっと頭を下げた。直角よりも更に深く――。
そんな突然の言動に、ラファエルだけでなく半ば背を向けていたギルベルトまでぽかんとした顔をする。
「え……えっと……」
ラファエルはぱちりと瞬き、とにかく顔を上げるようジークの肩に触れた。
「僕、あなたに何かされましたっけ? そもそもあの時って……あの森の中で会った時のことですか?」
言いながら、ラファエルは記憶を辿る。
霧の中でリュシーとはぐれたジークを見つけ、少し話をした。
そしてそれからまもなく、発情の兆候を見せたジークのフェロモンに誘われ、現われたのはギルベルトだった。
その結果、自分がギルベルトを押さえている隙に、ジークを逃がして――。
(……あぁ、そのことですかね)
要は、あの時はお世話になりましたという……。
「やぁ、あんなのお互い様ですから……」
そう改めて言われるほどのことでも……自分もあの後悪い目には遭いませんでしたし。
と、僅かに目を伏せ、ラファエルは苦笑気味に肩を揺らす。
「いえっ……だって、どんな理由があろうと……」
促されるまま顔を上げたジークは、けれどもなおもぶんぶんと首を振った。
そして再び深く頭を下げる。その顔を、耳をじわりと赤くして――。
「ラファエルさんの合意もなしに、む、無理矢理唇を奪うなんて……! 本当にすみませんでした!」
「――――唇?」
ラファエルとギルベルトの声が重なった。
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