20.束の間の

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 ――そう、そんなふうに、ラファエルもギルベルトも、あくまでも普通に接してくれたのだ。  だけど、それだってきっと、自分(ジーク)とのことをなかったことにしたかったからに違いない。  思えばやはり申し訳なく感じてしまう。  ……なかったことにして貰えるのは正直助かる。  助かるけど……。  それに甘えてばかりではいけないな、と、ジークは自分の頬をぱん! と一度両手で叩き、気持ちも新たに背筋を伸ばした。  *  *  *  午前がだめなら、午後はどうだろう。  昼食の後、もしかしたら話せる時間があるだろうかと考えていたら、今度はカヤがやってきた。  ジークの魔法の修行は来週だから、今日はアンリに用があっての来訪だろう。  やはり今日中に話を聞くのは無理そうだ。  半ば諦めたジークは、午前中にできなかった屋内の掃除をすることにした。  屋外の片付けが終わり、昼食を済ませた後、リュシーは再び所用で出かけてしまったので、ジークはジークで自分にできることを見つけるしかない。  ひとまず魔法の勉強は後に回して、ジークはそれぞれの部屋と廊下の床掃除に取りかかった。  *  * 「依頼されてた材料はアトリエに置いといたよ。あと、追加のこれな」  ダイニングテーブルの上には、食後にリュシーが用意しておいたハーブティーのポットが乗っている。  それを手に取り、手ずから自分のカップに中身を注いだ後、カヤはポケットから取り出した小瓶をアンリへと差し出した。中にはくすんだ青色をした液体が入っていた。 「思ったより早かったな」 「いや、思ったより大変だったよ。やっぱり青い薔薇は扱いが難しいな」 「それでも私が精製するよりはずっと早い」  そしておそらく質もいい。  カヤに初めて青い薔薇を提供してもらって以来、アンリは何度か追加を依頼していたのだが、青い薔薇の管理はカヤ自身がしているわけではないのと、もともと出荷用に育てているものでもないため、なかなか定期的な入手には結びつかないでいた。  そこで最初からカヤに精製したものを頼むことにしたのだ。  先方のアトリウム内にカヤの魔法道具(精製機)を置かせてもらい、譲渡するに満たない(はした)も全てそれに利用させてもらう。  そうすれば、少なくともいつ量が揃うともしれない機会を待つより、入手率はあがる。  それだけ()は張るけれど、例の媚薬を作ればすぐに元は取れるので問題はない。
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