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素肌に触れた指先が小さく動いて、慎ましやかに隆起していた先端を爪先で弾く。
とたんにぴくりと身体が震え、屹立からもとろりと新たな雫がこぼれ出た。
「んんっ……ぅ、ん……――っ」
包み込む手を何度も往復させると、腰の奥から競り上がってくるものが顕著になる。
胸の先を少し痛いくらいに摘まみ上げ、同時に輪にした指を早急に動かせば、間もなくびくりと身体が強張り、慌てて被せた手の中に白濁が飛び散った。
余韻に下腹部がひくんと震える。涙の滲んだ顔をシーツから起こすと、戦慄く唇の隙間から上擦った吐息が漏れた。
「……は、ぁ……」
残滓を吐き出そうと、腰が小刻みに揺れていた。
忙しなかった呼吸が落ち着いてくる。ゆるりと瞬けば、際に溜まっていた涙が伝い落ちシーツに小さな染みを作った。
……密やかに、少しだけ深く長い息をつく。
頭の中が急激に冷めていき、手の中に受け止めた粘液の感触が急に鮮明になった。
「……」
ジークはゆっくりと上掛けをめくり、身体を起こした。
私物の手巾を手に取り、危うく伝い落ちそうになるそれを丁寧に拭う。
なんとも言えない罪悪感。
治療という名目でここにいるのに、どうしても我慢できなくなることがあった。
ヒートに比べればずっと健全なはずのそれが、時々妙に恥ずかしくなる。
……そんな慰め方にまで、変化が現われてきているからかもしれない。
血の覚醒は、それまでの自分のあり方まで変えてしまうのか。
思ったところでなるようにしかならないのだが、性分だろうか、定期的に考えてしまう。
見つからない答えが、少し怖くもあった。
「……でも、すっきりした」
それでももう、覚醒前に戻ることは不可能だ。
不可能だと聞いている。
ならばと意識を切り替えるのも定期的に行う儀式のようなものだった。
ジークはそろそろとベッドに戻り、どことなく晴れやかな顔つきで静かに目を閉じた。
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