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「ふふ……可愛い」
いつの間にかすっかり正気を失ったジークは、眼前の法衣の襟元へと視線を落とす。そこに覗く鎖骨を擽るように辿り、更に下方へと手を下ろす。布越しの胸元に手のひらを添え、弄るように動かしながら、その下に隠された小さな突起を探る。
「ね、ねぇほら! 俺だよ、カヤ! 君、誰かと間違えてない……?!」
「可愛いです、カヤ先生」
間違えてない――!
どうにか抗おうと身を捩り、あえて明るく声をかけてみても何にもならなかった。それどころか追い討ちをかけられたような心地になり、カヤは自嘲気味に目を泳がせる。
「ちょ……っあ、待って、ジーク……!」
(いや待てこれきっとあれだよな? もしかしなくても例の種族特性、アンリが言ってた、アンリと同じだっていうあの――淫魔の発情状態! 絶対そう……!!)
珍しく頭をぐるぐるさせながら、必死でアンリから聞いた内容と本で読んだ詳細を思い出す。けれども何の手立ても浮かばないうちに、
「――んぁ!」
(ひえええ変な声出た! 違うんだって俺正直そういうのかなりご無沙汰だけど、そうじゃなかったとしても悪いけど教え子相手にそう簡単にそっちのスイッチ入らないから……!)
その自信は確固たるものであるはずなのに、まもなく探り当てられた突起を不意打ちのように弾かれると上擦った声が漏れてしまう。
涼しくなってきたこともあり、着ている法衣はそれなりに厚地だ。ただし、重ね着は洗濯が面倒だからとそれ以外何も着ていなかったのが裏目に出た。
どんどん色濃くなっていくジークのフェロモンの影響もあるのだろう、次第に布越しでも分かるほどに隆起した胸の先を、ジークは愛でるように撫で付ける。
「っ、んぅ……!」
カヤは慌てて自分の口を自分で塞いだ。
触れられている胸だけでなく、気が付けば下腹部まで兆しかけていて、そんな自分に衝撃を受ける。一層動転したカヤは何とか魔法が使えないかと再び片手に意識を向けるが、やはり魔法が発動することはなく、それどころか次には難なくジークにその手を掴まれ、草の上へと縫い止められてしまった。
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