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(う、嘘だろ……! お……俺は別に童貞でも処女でもないけど、さすがに預かりの生徒と一線を越えるわけには……!)
「俺、先生が、欲しいです……」
「いや、欲しくないな?! 俺おいしくないし……!」
(……っていうか、そもそもどっちだ? どっちっていうか、アンリの話によるとジークは雌型って話だから、やっぱ俺が上……ってことだよな?)
ということは?
このままだと上に乗られる的な……?
いや、いや、今はそれよりも――。
考えることが多すぎる中、とにかくカヤはこんな昼日中に、しかも誰に見られるとも知れない屋外で生徒とどうにかなることだけは避けようと思案する。
そもそもジークだってこんなことは本意でないはずだし、その性格からして、もしそんな事態になってしまったら後々どれほど自分を責めてしまうかわからない。
しかし、だからといってこれと言った解決策もなかなか浮かばず、カヤはジークの手が服の上を這うたび必死に息を詰める。
(困ったな、どうしたら……)
純粋な力で勝てない相手が話を聞いてくれない。ならば魔法で何とかするしかないと思うのに、その魔法が何故か発動しない。
それなら助けをと思っても、頼みの綱のリュシーは二時間後までやってこない。
(どうする……いまの俺にできる最善の策は――)
「!」
そこでカヤははっとする。
アンリなら……アンリなら。この翡翠の森でのできごとならおおよそ把握できるはず。
できるというより――既に気づいているのではないだろうか。フェロモンのことはよく分からないが、初めてのジークの魔法発動、少なくともカヤの魔法の消失なんかは、同じ魔法使い、しかもランクもそれなりのアンリならば、何かしら感知していても不思議はない。
思い至ったカヤはその名を呼ぼうと口を開く。そうあってほしいと願いながら、服越しに下腹部を圧迫してくるジークの下肢に身を捩らせながら、それでもどうにか声を上げる。
「アンリ……! 君、見てるんだろ――!」
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