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(きれいだな……)
そんな光景にぼんやり目を奪われるジークの上に、ノエルが無言で乗り上げてくる。
ギシ、とベッドが軋む音が部屋に響く。まっすぐ見下ろしてくるノエルを見上げ、ジークは「あの……」と小さく唇を動かした。
「いいから、私に任せておいで」
その唇に、ノエルが人差し指を押し当てる。
ジークは躊躇いながら、けれどもそれに抗うことはできなかった。
「そう、いい子だね」
顎先に長い指がかかり、僅かに持ち上げられる。かと思うとそっと唇が重ねられ、ジークは瞠目した。
「……ノエ、……」
「大丈夫。……ほら」
当たり前のように優しく唇を食まれ、角度を変えられるたび、乾いていた表面が少しずつ濡れていく。促すように合わせを舌先で舐められ、つつかれると、応えるように唇を開いてしまう。
そんな自分の反応に戸惑い、このままで良いのかと自問するのに、一方でノエルの施すそれはひどく甘く響いて、ほどなくしてジークの思考は真っ白に塗り潰されていく。夜空色の瞳をうっとりと緩ませ、自らも求めるように舌を伸ばす。
「ん……、ん」
「うん、甘い」
ノエルが満足そうに微笑みながら、僅かに顔を浮かせる。するとそれすら惜しいようにジークの腕がノエルの首へと絡められ、細く銀糸を繋ぐ唇を舌がなぞる。
ヒートが収まりきっていなかったのか、或いは他にも理由があるのか、ジークの身体に火がつくのは早く、まだ口付けしかしていないというのに、下腹部は既に布越しにも分かるほどしっかりと張り詰めていた。
「ふふ、そんなに美味しいかい、私の唾液は」
ノエルは追い縋るジークに宥めるような口付けを一つ落として、隣室へと続くドアを一瞥する。そしてその先にかすかな気配を感じ取ると、そちらへと向けて指先を小さく動かした。同じように、自分が入ってきた窓の方へも――。
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