♥23.月夜の晩に

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 アンリは不在、リュシーは夢の中。  それを知ってか知らずか、ノエルは室内(部屋)に特殊な魔法をかけた。完全に外界から遮断され、中の気配が外に漏れない上位魔法だ。次第に濃くなるジークのフェロモンも内へと留まり、外界の様子は術者であるノエル本人にしか分からなくなる。  ちなみにどこまで遮断するかは術者次第であり、ノエルの個人的な嗜好により開け放たれたままの窓からそよぐ風や、射し入る月明かりなどへの影響はない。 「ん……っ」  ノエルがジークの首筋に顔を埋めると、待っていたようにジークの喉が緩やかに反らされた。ほどよく日に焼けた健康そうな肌が、甘い香りを纏って艶やかに染まる。唇を押し当て、味わうように舌を這わせる。浮き上がる血管が舌先に触れると、確かめるように何度もその場所を食んだ。  その傍ら、服の上から胸元をまさぐる。その中心で色付く突起は既に期待に隆起していて、布越しにもそれは明らかだった。けれどもノエルはあえてそこには触れず、焦らすように周囲を撫で上げるだけだ。 「あ、あ、なん、で……っ」  ジークは僅かに身を捩らせた。  不満そうに口をつく吐息が熱を帯びて微かに上擦る。無意識に胸元が浮く。なおも頂きには触れてこないノエルの手に、自ら擦り付けたいように上体を捩る。 「……見かけによらず、やらしい子だ」  そんなジークの意図を察しながら、それでもノエルは指先を逃す。よりツンと布を押し上げる突起をかわし、指先で際に円を描く。煽られるまま、たまらなくジークの腰が揺れる。 「んんっ、ん……っ」  ジークが強請るようにノエルの頭を抱き寄せる。触れられてもいない屹立からも雫がとろりとあふれ出て、下着に染みを広げていた。身動(みじろ)ぐたびに寝衣の合わせがはだけ、震える内腿があらわになる。 「さて、淫魔の血は初めてではないけれど……」  ノエルは僅かに口端を引き上げ、再度首筋に口付けた。幾分尖った舌先を伸ばし、狙いを定めるように火照った肌を舐め上げる。うっすらと滲む汗すら甘かった。  脈打つ血管に誘われるまま、ノエルは唇を開く。そこにそっと歯を当てる。月明かりを反射して、赤く煌めく瞳を長い睫毛の下で伏せた。
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