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「っ……」
薄く開いた唇の隙間で、誘うように覗いた舌がゆっくりと動いている。
さっきとはまるで別人だ。リュシーは奥歯を噛みしめ、その現実味のない空間へとどうにか踏み出した。
「もう少しくらい大人しく寝てろよ……!」
口元を覆う手を外し、ジークの胸元に手を伸ばす。そのまま突き飛ばすようにして後ろに押し倒すと、抑えつけるように自重を載せた。
そうしながら、片手で瓶の蓋を開けようとする――が、うまくいかない。
もたついているうちに、ジークの手が伸びてくる。リュシーの服へと指がかかり、きっちりと詰めていた襟を開かれる。
あらわになった鎖骨を撫でる手つきが、否応なしに情欲を擽ってくる――。
「さ、触んな……っ」
その気もないのに背筋が泡立つ。リュシーは「くそ……っ」と悪態をつきながら、ジークを抑えていた手を戻し、瓶の蓋を急いで開けた。
ちらとジークの口元を見る。僅かに逡巡し、舌打ちを漏らす。
それから意を決したように、リュシーは手の中の瓶を自分の口元に寄せ、その液体を口に含んだ。
「ん、んぅっ……!」
他方の手が瓶の蓋を投げ捨てる。その手で、再びジークの胸倉を掴む。引き寄せながら唇を重ねて、口内の液体を一気に流し込んだ。
「……っ」
ジークがそれを嚥下したのを確認してから、リュシーは一度唇を離し、続けて残りの液体を呷る。
空になった瓶を傍らに投げ置き、ジークの両手首を掴むと、組み敷くようにしてシーツの上へと縫い止めた。
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