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一見、細身に見えるジークだったが、騎士を志願するだけあって、その体付きは思いの外しなやかだ。
着痩せするたちなのか、ほどよく筋肉を纏った体躯には無駄がなく、反してリュシーはどちらかと言えば華奢な部類だった。問診で聞いた寮での一件――同僚に襲われかけた時――のことからしても、このままではいつはね除けられてしまうか分からない。ともすれば、容易くひっくり返されてしまう可能性だって――。
リュシーはひやりとしたものを感じながら、ジークの両手を必死に押さえた。
けれども、ジークはそんな素振りは一切見せなかった。
早くも一度目の液体の効果が表れていたのだろうか。リュシーが急くように二度目の口移しを実行した際にも、そこに抵抗らしい抵抗はなく、どころか、まるで口づけそのものを楽しみたいみたいに、うっとりと目を閉じ、唇を開かれてしまう。
「ん……っ……」
こくん、こくんと、ジークの喉が鳴る。その振動が直接伝わってくる。
刹那、ジークの舌先がリュシーの唇に触れた。
「っ!」
リュシーは弾かれたように顔を離した。その目は怯むように揺れていた。それを認めたくないよう、すぐさま頭を振って振り払う。
腹いせのように、辛うじて掴んだままだったジークの両手を、ぎり、と強く握り締めた。
「……っ」
ジークがかすかに声を漏らす。
それにはっとしたリュシーは、警戒しながらも少しだけ力を緩めた。
それでも解放するには至らず、ジークはベッドに縫い止められたままだった。
「リュシー、さん……?」
ゆっくりと瞬く双眸に、正気の色合いが戻ってくる。思ったよりも効き目は早く出たらしい。
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