♥09.あてられたのは

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 *  *  *  ジークの上に影を落としている男の名はギルベルト――。  アンリが帰路で出会った、ラファエルという天使が探している悪魔()だった。  ギルベルトはジークの上に跨がるようにして乗り上げ、急くように服の合わせを左右に開いた。  さらされた素肌――胸元から、ふわりと甘い香りが舞い上がる。  ギルベルトは無意識に舌を覗かせながら、誘われるように顔を近づけた。 「っ、ふ……っ」  味見でもするかのように、心臓の辺りを舐め上げると、眠っているはずのジークの口からくぐもった吐息が漏れる。  ギルベルトは心なしかぎらついた目を細め、一般的なそれより長く尖った爪を胸元へと滑らせ――そして不意に突起を引っ掻いた。 「っ、あ!」  びくりとジークの身体が跳ねる。短く漏れた嬌声の(のち)、熱を逃がすように呼気が吐き出される。  ギルベルトは一瞬ジークの顔を見て、それから再び胸へと視線を戻した。慎ましく色づいた小さな尖りは、触れた側も、触れていない側も、既にツンと勃ち上がっていた。 「美味(うま)そうな匂い……」  身体から立ち上るそれも、発情してすぐの状態からすれば随分弱いものの、それでもギルベルトが触れる前に比べればずっと濃いものになっていた。  ギルベルトは匂い――特にその手の――に敏感だ。例えばリュシーが気にした隻眼の狼よりも更に簡単に煽られ、すぐに歯止めが効かなくなる。  そもそもの奔放な性格も手伝って、まずそれを制しようという意識がないのもそれに拍車をかけていた。 「あっ……ぁ、んん……っ」  一方の突起を爪で挟み、同じように先端の尖った舌先で他方をつつく。  ジークの声が次第に熱を帯びていく。匂いもいっそう深みを増した官能的なものになり、味覚がもたらす肌の味まで、癖になるような甘味を滲ませ始めている気がした。
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