20.束の間の

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 *  *  * 「まだ話の途中だったのに……有無を言わせず魔法で追い出すなんて、失礼な人ですね」  突然屋外――それも中空へと放り出され、辛うじて着地したラファエルがぶつぶつこぼしていると、 「わ、本当だ、すごい!」 「だろ? 見ろよこの(つや)やかな羽」 「あ、尻尾も」 「あぁ、尻尾は出したり出さなかったりだけどな」 「そんなこともできるんですか」 「まぁ、体調とかでたまに消せなかったりもするが……。あ、これ言うなよ。尻尾は弱点でもあんだから」 「なるほど……わかりました。内緒ですね」  死角となっている場所から、そんな会話が聞こえて来た。  ギルベルトとジークの声だった。 (ギル(あの人)、まだいたんですか……)  ラファエルは呆れ気味に溜息をつき、そのままそちらへと足を向ける。けれども、彼らの姿が見えてくる前に、ふと思い立って足を止めた。 「つーか、ジークはしばらくここにいんのか?」 「あぁ、えっと……いつまで、っていうのは俺には分からなくて」 「ふーん……そうなのか」  傍らの壁に背を預け、腕を組みながら、ラファエルはそっと聞き耳を立てる。 (……え? なんですか? ヒート中でもない彼に興味を持ったんですか?) 「まぁいいや。じゃあ、とりあえず近いうちにまた話そうぜ。お前の知らないあんなことやこんなことも、そん時に教えてやるよ」 「あ、はい。ありがとうございます! ……えっと、ギルベルトさん……で良かったですよね」 「ギルでいい」 「ギル……さん」 「さんとかいらねぇよ」 「ギ、ギルさ……ギル……? ぜ、善処します」 (あんなことやこんなことって……いったい何を教えるつもりなんです)  ……っていうか、いつの間にそんな仲良く?  気がつくと、妙に親しげに話しているその様相に、ラファエルは思わず閉口した。 (……いいんですか、それで)  二人とも、過日にあったことを覚えていないんでしょうか?  ギルはともかく……ジークの方も。  ラファエルがそう思うのも無理はない。  だが実際、そこにはもう特筆すべき確執は存在していなかった。
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