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リュシーはため息をつきながら、ジークの身体をまっすぐに寝かせ、上掛けを被せた。
それから部屋を出て行くと、最後に一瞥だけ残して扉を閉める。
「冗談じゃねぇ……」
閉ざした扉に背を預け、汗に張り付く前髪を掻き上げながら頭上を仰ぐ。
何かを堪えるように歯噛みして、目を細め、その傍ら、ドア越しに再度室内の様子を窺った。
耳を澄ませると、衣擦れのような微かな音がした。ジークが寝返りでも打ったのだろうか。少なくともベッドを下りるような気配は感じられず、すぐに聞こえなくなったそれに、リュシーは改めて息をつく。
「あの主人……適当なことばっか言いやがってっ……」
吐き捨てるように呟くと、思いがけずガタン! と硬質な音が響き、反射のようにびくりと肩が跳ねた。そんな自分に舌打ちしながら、再び背後に意識を向けたものの、それきり気になるような物音が聞こえてくることはなかった。
脱げかけていたブーツが床に落ちたりしたのかもしれない。思えば、もう一方のそれはリュシーが組み敷いた拍子にすでに脱げていた気もする。
(あーもう……)
リュシーはそのままずるずると足下にへたりこんだ。
ジークの手により、一方的に開かれた襟元を掻き寄せながら、忌々しげにため息を重ねる。
(なんで俺がこんな目に……)
立てた膝の上に腕を置き、そこに顔を伏せていると、ふっと意識が遠退きかける。
(っ……やば)
不意におりてきた眠気に、リュシーはふるりと頭を振った。
(こんなとこで寝たら踏み潰される……)
よろめきつつも立ち上がり、重い足を引きずるようにして、壁伝いにアトリエへと歩き出す。
やがて上げた視線が捕らえたのは、窓際に佇む銀細工の鳥籠だった。
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