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いい人、1日目
月曜の朝、駅から会社に向かう途中、1メートルくらい先に、空のペットボトルが転がっているのが見えました。
私の前を歩く人たちは、ペットボトルが見えないのか、それとも見ないフリをしているのかは分かりませんが、誰も拾おうとしません。
歩きながらすごく迷いました。
私が拾わなくても、きっと咎める人はいないでしょう。
でも、思い出したんです。私はいい人になると宣言したんでした。
勇気を出して、小走りでペットボトルに近づきます。少しでも後ろの人との距離を取るためです。
腰を曲げ、手を伸ばし、ペットボトルを掴みました。
「ちっ」
後ろからおじさんの舌打ちが聞こえました。
私はペットボトルをぎゅっと握りしめ、歩き出します。
「急に止まるんじゃねえよ」
追い抜きざま、私に聞かせるように呟きました。
でも私は怒りません。
なぜなら私はいい人だからです。
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