ある雲の物語

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41歳 主婦 妄想、はじめました。 恋愛ドラマの妄想——— 彼が私の不倫相手だったら... とある駅での妄想——— 遠距離恋愛カップルの一年後は...このホームで彼からの突然のプロポーズ... 毎日、私の妄想は止まらない。 夕方、まだ日差しが暑い中 洗濯物を入れていると... 大きな入道雲が見える。 また、私の妄想が始まる———。 あの雲、まるで大きな天空のお城の様... お城が形を変え...左上の雲が千切れた。 千切れた所から手が伸びる... 離れていった恋人の心を追いかけているみたいだ。 私は彼を追いかける。 「別れるなんて、いやだ!行かないで!」 手を伸ばしても届かない。 彼の心はあの雲の様に...離れていく。 形を変えながらやがて消えていった...。 私はあの人との恋を思い出した。 レモンの様に甘酸っぱかった恋。 私に初めてを教えてくれた人...。 きっとずっと忘れられない人...。 でも雲の様にかすれて、顔はもう思い出せない。 まだまだその入道雲は変化する。 今度は右上のひょこっと出た雲が千切れた。 主体の雲と、その子供には天使の輪みたいのが見える。 やっと来てくれた命だったのに... 消えてしまった。 それから何度も来てくれたのに 無事に産まれてくれる事は無かった。  夫はそんな私に呆れて離れて行った。 1人になって私は病に倒れ、産んであげられなかった子供達を思いながら...死んでいった。 彼女は子供達を愛しそうに見つめている。 きっと天国で会えたんだね! 良かったね...と私は涙が溢れた。 気付いたら私の首は汗と涙で濡れていた。 眩しいほど晴れた空でも、 雲が少しずつ広がって行き... 雨がポツポツ降る事もある。 でも、その雨も雲もいつかは晴れていく。 永遠には続かない。 また生きていく限り...絶対晴れるのだ。 ここに広がる雲たちは人生の様。 「さぁ、夫と子供達が帰ってくる。」 洗濯物を急いで入れる。 入道雲の少し遠くにウロコ雲が見えた。 まだ暑いのに...次は秋が来るのね。 ワクワク期待をしながら... まだまだ私の妄想物語は続いて行く。 終
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