隠れんぼ

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もういいかーい まーだだよ もういいかーい もういいよ 神社の裏の林の中、私は木の幹から顔を上げると周囲をぐるりと見回してから方向の見当をつけ、歩き始めた。 頭上ではセミが太陽の光に対抗するかのように鳴いている。 今日は夏休みの最終日だ。 夏休みに入ってから毎日ここで隠れんぼをしているけれど、まだ私は1度も勝てたことがない。 今日こそは勝ちたいな。 あ、そういえばこっちって行ったことないかも……。でも……。 私は一瞬の逡巡の後、古びた立ち入り禁止の柵を超えた。 だってこっちに隠れているかもしれないし。 さっきよりも少し足元の悪い道を進んでいく。 振り返るとまだ柵がきちんと見える。 うん、大丈夫。 少し歩くと、大きな木が見えた。 あそこの後ろかもしれない。 そう思って近づくと、かさっと落ち葉を踏みしめるような音が微かに聞こえた。 きっとここだ! 私は小走り気味に木に近づくと、後ろにひょい、と顔を出した。 みーつけた その声を発したのは私か、それとも木の後ろで待っていた子なのか。 どちらかわからないまま私は足を滑らせ、崖から落ちていく。 木が視界を遮り、崖になっているのがわからなかったのだ。 もーういいかい 薄れ行く意識の中で、何度も聞いたことのある気がする女の子の声が響く。 *☼*―――――*☼*――――― ここは夏の間に女の子が迷い込むと言われている神社。 ひんやり涼しく、ひと夏を過ごすにはちょうど良い。 今年はどんな子が迷い込んでくるのだろう?
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