どんなにタイプでも

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どんなにタイプでも

「蓮!?早かったじゃない、久しぶり~!」 お姉ちゃんがやってきて言う。蓮さんに軽くハグした。 「引っ越し業者は10時くらいに来るから。葵、出るの何時くらい?」 「10時10分くらいかな」 「葵らしいや。僕とゆっくり話す時間もとらないなんて。でも、今からなら、お茶くらいできるよな?」 「うん、淹れるわ」 「あっ、私が」 私が慌てて言うと、お姉ちゃんが制して、 「最後くらい、私にやらせて。蓮はいつものカフェオレでいい?陽葵はミルクティー?」 「ああ、それで頼む」 「私も。ミルク多めでね」 お姉ちゃんがキッチンに入って準備してくれているあいだ、軽く自己紹介しあった。 「葵の妹の陽葵です。蓮さんは、お姉ちゃんと同じ職場なんですか?」 「陽葵ちゃんは、大学生?僕は葵とは別の職場で…職場交流会で知り合ったんだ。僕は、サン・インダストリアルって言う家電メーカーで工業デザインを担当してる」 「私は、永岡大学英文科の1年生です。サークルは英会話サークル。蓮さんは彼女いる、って聞いたけど」 「『くん』づけの方が嬉しいな。僕の彼女は奈美って言って。今日もここに来たいって言ったんだけど、原則、ここには連れて来ないよ。嫌な思いさせちゃうと悪いから」 蓮くんはいろいろ気を回してくれているのだな、と思った。そりゃそうだ、目の前でいちゃつかれたり、隣の部屋でベッドに入られたりしたら、たまったもんじゃない。 「お待たせ~」 お姉ちゃんがキッチンからリビングに入ってきた。 「盛り上がってる?」 「ちょうど自己紹介が終わったところだよ。陽葵ちゃんと葵って、顔がそっくりだね」 そうかな?2人で顔を見合わせる。 「陽葵は、大学時代の私にそっくりかもね。私は、そのころよりは大人っぽくなったと思うけど?」 「確かに、葵の方が大人っぽいけど、雰囲気がすごく似てる。やっぱ、姉妹なんだな。僕は一人っ子だから、何だか羨ましいよ」 「蓮、陽葵のことを本当の妹だと思って、色んなことから守ってやってね」 お姉ちゃん・・・だから、私、もう、18だってばぁ。 「任せろ!陽葵ちゃん、本当の兄貴だと思って僕を頼ってな!」 眩しい笑顔で言う蓮くん。どうしよう、ドキドキしちゃう。やっと出た言葉が 「・・・ありがとう」 だった。 駄目だ、どんなに蓮くんがステキでも、ドンピシャのタイプでも、彼女のいる人なんだ。好きになったら苦しくなるだけ。駄目なんだ。私は自分に言い聞かせた。好きにならずにルームシェアなんて、出来るんだろうか?私は一抹の不安を感じていた。
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