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それでも、誓くんは、ギリギリまで私のそばにいてくれた。
明日の月曜から着任なのに、今日の最終の新幹線で行くって決めて、引っ越しの荷物は不動産屋さんに受け取ってもらった。
だから、今夜、この後、初めて新しい部屋に入る。
荷ほどきも全然してない。
きっと、今夜、寝る布団も布団袋に入ったまま。
それでも、少しでも一緒にいたい私のために、ギリギリまで残ることを選んでくれた。
でも、やっぱり、離れたくないよ……
ホームで涙をこぼす私を、誓くんはその胸に抱き寄せて、ギュッとその腕に閉じ込める。
発車まで、あと5分……
このまま時間が止まってしまえばいいのに。
けれど、そんなことできるはずもなく、時計の針は1分、また1分と進んでいく。
「七星……
毎週は無理かもしれないけど、出来るだけ戻ってくるから」
誓くんの苦しそうな声が、頬を押し付けた胸から直接響いてくる。
「でも、明日は会えない」
今まで、仕事でも、プライベートでも、ずっと一緒だった。
毎日一緒だったのに、これからは、頑張っても、月に数回しか会えない。
私のわがままだっていうのは、分かってる。
誓くんのせいじゃないことも。
分かってるけど……
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