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かさりと音がした。
カケルの視線の先で、草が割れた。
「あやや、ここは一体、どこですかね?」
南国特有の袖無し複数枚の布が重なったようなデザインの膝丈スカートを着た青い瞳の娘が首を傾げた。
「どこって、ホルン地域密猟区アルタイルだけど?」
カケルは呆然としながらも答えた。
「ほむほむ。どうやら私は恐ろしい場所に来てしまったようですね」
「君、誰? 何してるの?」
「私は、世界を治めるブラックベルベット様に遣えているシャンディ・ガフと申します。ええと。恥ずかしながら、迷子になりまして」
「はあ?」
カケルはいまいち話が理解できずにいた。
「ですから、ブラックベルベット様の住んでいる神の世界へ通じる路を探して旅をしているのです。ですが、次の街マリンバへの道を外れてしまったんですよ。情けないことに」
「いや、創造主の遣えているとかよく、分からないんだけど」
「皆さん、そう言いますね。しかし、私はブラックベルベット様を知っております。ええ、証明もできます」
自信満々のシャンディにカケルは益々不信感を抱いた。
「まあ、良いけどさ。俺はそろそろ退散するよ。気を付けて行けよ?」
カケルは持てるものを風呂敷に包んで背負うとシャンディから逃げるように走り出した。
「あ、待ってください。か弱い乙女を置き去りにするなんて。酷いですよ!」
後ろからシャンディが叫んでいたがカケルはとにかく走った。
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