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「先輩の家、素晴らしい結界ですね。
悪霊や悪鬼は入ったら逃さない作りになっていますね。」
「取り敢えずありがとう。
それで、なんでうちに来てんの!?」
快斗のおかげで良くも悪くも誤解は解けた。
なのに何故か校門で待ち伏せされ、振り切ろうとしたが付けられた。
「はい!先輩にお願い事がありまして!」
「おう、そうか、じゃ。」
「なんで、玄関閉めようとしてるんですか!」
流れでいけると思ったが締め切る前にノブに手をかけられた。しかも、女の子なのに力が強く逆にこじ開けられそうだ。
「わかった!聞く、聞くから!」
「言動と行動が合っていません!」
「だって!どうせ夢魔についてだろ!
俺はアレには関わりたくないんだよ!」
「そんな事言わずに話だけでも!!」
***
「お茶とても美味しいです。」
「そうか。
では、お茶についてはまた来週。」
「私の話をお茶についてにすり替えないでください。」
結局こじ開けられ、立ち話というわけにもいかず中へ招き入れてしまった。
結月はコホンッと一つ咳払いをし話を切り出す。
「今日、先輩にはあるお願いをしに来ました。夢魔祓いを手伝ってください!」
「ごめんなさい!」
目蓋を閉じる暇など与えない即答。
お互い地に頭を伏せその状態で数秒間の沈黙。そして、カラスが鳴き沈黙を破る。
「一度だけでも!!」
「それでも!無理!」
再び沈黙が空間を満たす。
そして、少し頭を上げ、互いの目が交錯し一杯お茶を口に含み一息。
「てか、第一に俺は対魔師の資格を持ってないからのどの道無理なのでは。」
「大丈夫です!対魔師の禁則事項に、半魔とのチームを組む場合はそれに限らないと書いてあります!」
知っていたか。
ワンチャン有るかもと思ったがダメだった。
夢魔に対して俺は無力と言い出そうとしたがここまで食い下がらないのは半魔を連れていくメリットを知っているからか。
「俺は夢魔と対峙した事ないぞ。」
「私がいます!先輩は夢魔を見つけるだけでいいんです!
……後、できれば夢の中に入るのも。」
半魔とチームを組むメリットをつらつらと言ってくれる。
対魔師は憑いているのは見分けられるが夢の中に入ると誰が夢魔なのか判別出来ない。
僅かな違和感を感じて、夢魔を見つけ祓うのが対魔師だが、半魔がいればそれを省ける。
それに夢魔が作り出す夢に半魔は同調しやすく入りやすい。
「てか、なんで、対魔師なんかに。」
「恥ずかしながらお金です。」
「ほんとに恥ずかしいな。」
ここでは普通建前を言いふらすものだが即答で飛び出す私欲。度肝を抜かれそうになる。
「それで、なんで金に?」
「対魔師は自由に行動する為、高校生でも一人暮らしが認められているのは知っていますか?」
「ああ、知ってる。」
「勢いで一人暮らしを初めて家具を買い漁っていたら親からのお金がなくなりました。」
「なるほど。」
「生活費がやばいです。
ガス、水道、電気が止められます。」
「おう、そうか。」
想像以上に深刻な問題だった。
つまり、俺はこの子の生活を人質に取られているわけだ。これを突っぱねるのは簡単だが野垂れ死なれたらやばい。
それに明らかに対魔師成り立てのひよっこ。
「同行につき、完遂時の報酬5割。」
耳元でそう囁かれた。
耳に息を当てられビクッと跳ねる。
しかし、それどころではない。
夢魔退治の報酬はその夢魔にもよるが最低でも2万以上。
最低ラインでも俺に1万。
バイトにしたら十時間労働分だ。
俺も一人暮らしの身。
甘い蜜を目の前に置かれてしまい金への欲求が止まらなくなる。
「カッコ仮の誓約なら……。」
……あああ、言ってしまった。
「はい!お願いします!」
目をキラキラさせ喜び目の前の女の子。
ただ、女の子の方が圧倒的に危険なのに報酬半分もいいのかと思うがそれどころではないというのが喜び方から分かる。
「では、改めて。結月レイです。」
「夜宮真斗だ。よろしく。
結月さん。」
「はい、よろしくお願いします!
夜宮先輩!!では早速!」
対魔師にはそれ専用のケータイアプリがインストールされている。
夢魔を調査する調査隊が夢魔を発見、観察から推定難易度を識別し、アプリに載せる。
だが、そこに載せられるのは余裕がある人が受け持つモノ。
ほとんど、その端末に指定されたミッションが送られてくる。
「私のところに一件来てます!」
マップを開き場所を特定。
ここから20分程歩いたところだった。
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