対魔師

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夜9時頃。寝るにはまだやや早い時間だ。 しかし、今回のターゲットは早寝早起きを苦無くするお婆さんだ。 その老人の家を訪ね、チャイムを鳴らす。 「おや、まあ、お若いお二人で。 ごめんね。こんな夜遅くに。」 「いえいえ、変わった事はありませんか?」 「大丈夫よ。今日はよろしくね。」 気さくなお婆さんだった。 中に案内され、茶菓子などを出される。 調査隊が話をつけておいてくれるので話はとんとん拍子に進む。 しかし、お婆さんの思い出話を聞いたりなどは自分達でしなくてはいけない。 だが、願いは聞いてはいけない。 それは、俺達の考えを偏らせ、結果的に視野を狭める結果になる。 「そうだね。アレは沖縄旅行だったかしら。 死んだお爺さんとドライブしたのを今でもよく覚えてる。それと今でもあの時の魚料理の味はこの老体の記憶でも鮮明に覚えてるわ。 それから………。」 一時間程でお婆さんの話を聞き終えた。 基本的には定年退職後にお爺さんと行った沖縄旅行についてだ。ドライブ、食事、観光。 どれがお婆さんが真に望むモノかを見定め、夢魔の化けの皮を剥がさなければならない。 「じゃあ、おやすみね。」 「はい、おやすみなさい。」 お婆さんは布団につく。 しばらくして、寝息を立て始める。 「先輩。」 俺は頷きお婆さんの手を左手で握る。 そして、右手で結月さんの手を握る。 深呼吸をし目を閉じて意識を集中する。 魂の脈たる体全体に張り巡らされている霊脈を見つける。 「同調開始。霊脈接合。」 お婆さんの意識が俺の中に飛び込んでくる。 その中でお婆さんの深層にある場所に向かい、その場所へといたる。 「凄い。こんなにも綺麗なんですね。」 結月さんがそう言うせいで目を開ける。 暗闇の中で夜空を照らす星々のような光の粒が空中を待っていた。 それは魂の同調時に発生するオーブの光。 「続けるぞ。」 もう一度目を閉じる。 初めての同調だ。 だが、さっきので感覚は掴んだ。 「深層心理到達。座標固定。 経路固定。転送準備完了。行くぞ。」 「はい!」 「転送開始!」 オーブの光が俺達を包む。 そして、世界は暗転する。
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