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プロローグ
午前7時。
〈ピピピッ!〉と耳元で騒々しく目覚まし時計が音を鳴らす。
「……新学期か。」
少しばかりの春休みが終わりを迎えた。
新学期のお知らせと言わんばかりにカーテンの隙間から眩しい朝日の光が顔を照らしている。
寝惚けた眼を擦りながら立ち、自分の体の調子を確かめる為に身体全体を動かしてみた。
「問題なし。と。」
春休み中ずっとゴロゴロしていただけだがこれと言った体調不良はない。
寝起きの体への違和感は少し動かしたら消えていた。
台所へと向かい朝食の準備を始める。
手軽で簡単な目玉焼きを5分もしない内に作り終え、〈チンッ!〉とトースターから焼き上がる音と香ばしい匂いを漂わせてパンが焼けた。
その上に目玉焼きをのせ、インスタントコーヒーを一杯。
それが今日の朝食だった。
「ヤバっ!!」
食べ終えた時、既に学校へ向かう時間になっていた。
急ぎ、制服に身を包む。
今だに何故いるのか不思議に思う学校に必要な名札を手に取る。
そこには自分の苗字夜宮と書かれている。
そして、下の名前は真斗。
そうつけてくれた親は他界。
誰もいない部屋に向けて「いってきます」とその声は静かな部屋にはよく響いた。
駆け足で移動して玄関の戸を開け、外へ。
それと同時に家全体を覆っている対夢魔用の結界に触れ、視界が眩む。
半人半魔という不可思議な存在である俺にはやや堪える。
いつまでも慣れない、この気持ち悪さ。
それを押し殺して学校へ向かう。
高校に上がって早一年が経ち新学期の二年。
これにも慣れたと言うべきモノ。
生まれた時から向けられる周りからの視線。
友人を作る事さえ許されない環境。
息が詰まりそうになる程の憤り。
「憑かれてますよ。」
その中でたった一人俺に話しかけて来た女の子。制服の学校のエンブレムの色から一学年下の新入生。
髪は短く、しっかりとした顔立ちの中にあるあどけなさ。
ドキッとか来るシチュエーションだか、その前の一言でドキもクソもない。
「それは私が祓います。」
その子はそう言った。
ああ、またか…。
何度も勘違いで言われたその言葉。
そして、その子は続いてこう言う。
「貴方の願いは何ですか?」
それが、悪魔を夢魔を祓う最短ルート。
そのルートへの道標となるモノを探る為の質問。
「えと、場所を移してからでいいかな?」
「はい!」
場所を変える、だがきっと俺は答えられない。
なぜなら俺は自分の願望がわからないからだ。
ただ言えるのは俺が決して何かに憑かれていない事だけだ。
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