パパ×ナナ

「ねえパパそれよりさー、ナナ、歯が痛くて痛くてしょうがないんだよね。痛み止めの薬どっかない？」

　よかった。まだ話してくれるくらいには嫌われてなかった。完全に話は変わってしまったけど……。　

「押し入れに置き薬があるから探してみなよ。虫歯？　早く歯医者行かないと」
「うん、多分虫歯だね。明日の朝イチで立川の歯医者予約してる。だから今日のうちにアパート戻っとかないと」

　そうか……じゃあ絶対に今日帰るのは決まってるんだ。どうにか日にちを伸ばせたらと思っていたけれど、僅かな希望も絶たれてしまった。

　パパのいじけはマックスになったぞ。一人暮らしなんかしてるから虫歯になるんだ。こうなったらガツンと言ってやる。

「ナナさ、ちゃんと朝晩歯磨きしてる？　今だってポリポリお菓子ばっかり食べて。一人暮らしだからって、自分に甘い生活ばっかりしてるから虫歯になるんだよ」
「なによ。ナナのアパート一回も来たことないくせに、パパにナナの暮らしの何が分かるの？　だいたいねえ、そもそもと言えばナナが虫歯になったのはパパのせいじゃない！」

「は？」
　パパとナナの虫歯に何の関係が？
「パパのせいで虫歯菌がナナにうつったんだから！」