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 ……ケガがうまく治らなくて、治らないだけじゃなくてそこからどんどん崩れ出したのは、いつ頃だったのかな。  痛かったです、すごく。正直、今もずっと痛いです。薬を使って病気を抑えてるけど、それにもやっぱり限界があるんだって、お医者さんが言ってて。  このままじゃ、身体が動かせなくなる。動けなくなることは、おれたちにとって死ぬのと同じだ。だけどひとつだけ、助かるかもしれない方法があるって。  ただし、それもすごく難しい手術になる。途中で命を落とすことも十分あり得る、覚悟はしておいてほしい、って、言われました。    痛いのはいやだし、こわいです。死ぬのはもっとこわいです。逃げられるなら、いま崩れかけてるとこを無理に動かしてでも逃げたい。痛いよ辛いよって、声に出して泣きわめきたい。  でもおれ、一回もしてないんです。というか、する必要がなくなっちゃいました。  ミオがすっごい泣くんです。お見舞いに来てお医者さんから話聞いて、すぐおれのとこに飛んできて。なんでカイトがこんなに辛い目に遭わなきゃいけないの、私が代わってあげたい、私の命を分けてあげたい、って……  そんなの聞いたら、泣けません。そんな体力があるなら、病気と戦う方に使いたい。  持ってる力を全部使って戦って、病気に勝ってやるんだって、そのとき決めたんです。  えっと、あと一分ですか? うわあ、早いな。なんかもっと言いたいことがあった気がするんだけど……  じゃあ、あの。これ、あとでミオも聞くんですよね? あの子へのメッセージでもいいですか? だめ?  ――よかった。ありがとうございます。  ミオ、聞いてる? おれね、いまインタビュー受けてるんだ。大手術に臨む少年の生涯と心境にせまる、だって。なんかカッコいいな。  毎日お花持ってきてくれて、ありがとう。花の名前とかも教えてくれてありがとう。いつも笑っててくれてありがとう。  ……ううん、その前に。おれのこと、見つけてくれてありがとう。名前をくれて、ありがとう。おれの代わりに泣いてくれて、ありがとう……  ごめん、なんか湿っぽくなった! 大丈夫、おれまだ死なないから。死なないように、ちょっとでも長くミオと一緒にいられるように、がんばるから。  だからね、ミオ。五分なんかじゃ全然足りない。おれが手術受けて、ちゃんと帰ってきたら、ずっとずっと一緒にいて。おれと一緒に生きて。一生伝え続けたいくらい、大好きだ。  じゃあ、行ってきます!!  
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