05 -ZERO FIVE-

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 制限時間まであと00:02:20……。  バイクを走らせたままチラりと腕時計を見やると、1秒、また1秒と時間が削られてゆく度に、俺の脳内には秒を刻む鼓動の音がまたしても鳴り響く……。  カウントダウン設定にしてあるそのデジタル時計には、無慈悲にも少なくなっていく数字が液晶画面に表示されている。  土井の言葉通り、程なくして大通りへ出れたのはよかったが、残り時間があと2分余りになってしまった……急がねば。  俺はバイクをさらに加速させ、ただ一心に大通りを指定ポイントへ向けてひた走る。  だが、ここで思わぬアクシデントがまたもや俺の行く道を邪魔する。  原付に乗る調子こいた若造が三人、蛇行運転をして俺の進路を阻んだのだ。  派手なスカジャンを着て、白いメットの下の髪は明るい金に染め上げた、典型的なバッドボーイどもだ。 「ヒャハハハ!」  それがわざとやっている嫌がらせであることは、時折、こちらへバカ面を振り返えらせて下卑た笑い声をあげていることからも一目瞭然だ。  後から煽ってはいないが、いわゆる〝あおり運転〟というやつの一種といったところだろう。  まったく。こんな余裕のない時になんて運命の悪戯だ! もしかして、何者かが俺の任務を失敗させようと企んでいるのか!?  ともかくも、こんなゴミに時間を費やしている場合ではない。  このような社会のクズには、自分達がいかにクソなのかをその身をもってわからせてやらなければならない……。 「ヒャハハハ…え? う、うわあっ!」 「な、何すん…うごおぉぉっ!」 「え? え? や、やめ…うぎゃああああぁぁぁ~っ!」  俺はバイクを一気に加速させ、一人の首根っこを引っ掴むと原付から引きづり下ろして地面に叩きつけ、二人目は車体の脇腹に蹴りを食らわせて横転させ、最後の三人目はハンドルを掴むとコントロールを奪い、そのまま電柱へ突っ込ませてやった。  残念ながら、死ぬまでには至っていないので安心しろ。  ま、少々問題にはなるだろうが、()や警察には威力業務妨害に対する正当な対応とかなんとか言い訳をしとけばいいだろう。いつものことだ。
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