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制限時間まであと00:00:25……。
だが、説明しているような時間はない。
もしも俺が間に合わなかったら、おそろしく大変なことになることは火を見るより明らかだ。
「すまん。急いでるんだ。強行突破させてもらうぞ!」
「き、君、何をする! うわっ! …うぐ…」
申し訳ないが、俺は警備員の腕を取って背負い投げをすると、目もくれずにカウンターへと突撃する。
「きゃあぁぁぁーっ!」
制限時間まであと00:00:15……。
突進してくる俺の姿を見て、蒼ざめた女性行員達が甲高い悲鳴をあげるが、もうそんなのに構っている暇はない。
行員も客達も騒然と見つめる中、俺はカウンターを飛び越えると、ターゲットと思しきフロアの一番奥に控える人物の方へ向けて全力で駆ける。
制限時間まであと00:00:10……。
「ええい、どけっ! 邪魔だ! 時間がないんだ!」
呆然と立ち尽くす男性行員達が進路を邪魔するが、それを強引に掻き分けながらさらに急ぐ。
制限時間まであと00:00:05……。
「……な、なんなんだね?」
「…ハァ……ハァ……頭取の浜貞人さんですね?」
ようやくターゲットの机の前までたどり着くと、俺は肩で息をしながら、唖然とこちらを見つめるその小柄な中年男性に尋ね返す。
「……そ、そうだが。な、なんの用だね?」
制限時間まであと00:00:03……。
よし。ターゲットに間違いない。なんとかギリギリ間に合ったようだ。
俺は自分の心臓とリンクする、秒を刻む鼓動の音を全身で感じながら、モスグリーンのバッグを下ろしてブツをターゲットの眼前へと差し出す。
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