05 -ZERO FIVE-

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「どうも。MTE――(めし)テロイーツです。ご注文いただいた廬山膳(ろさんぜん)さんの上海風海老焼きそばをお持ちいたしました!」  そして、小刻みに瞳を震わせて立ち尽くすターゲット(※お客さん)に、こちらの身分を名乗るとともに注文の品について説明した。 「……あ、ああ、頼んだ昼飯か……そ、それは、ご苦労だったね……」  ボソボソと小声で答えるターゲットの前で、俺は腕時計を確認する。  制限時間まであと00:00:00……。  カウントダウン設定のデジタルの文字は、俺が目を向けるのと同時に〝0〟になって止まった。  フゥ……どうにか今回もミッションクリアだ。  危なかった……もし遅れていたらクライアント(※料理店)に配送料をもらえないどころか、MTEの信頼も失墜させるところだった……「依頼があってから5分以内にお届け」という売り文句は、この俺にしてもなかなかにキツイ縛りだ。 「――それじゃ、またのご利用お待ちしておりまーす!」  料金を受け取った後、俺は居酒屋の店員のようにハキハキと元気よく挨拶の言葉を述べ、再びYATHCO製のバッグを担ぐとすぐさまその場を後にする。  ああ、ちなみにこのモスグリーンのバッグ、肩掛け鞄だと想像していた者も多いかと思われるが、じつは四角いリュックサックタイプのものだ。でなければ、デリバリーの料理を運ぶのに不便だからな。  ともかくも、ミッションを成し遂げた俺は誇らしい気分になりながら、奇異な眼で俺を見つめる行員や客達の間を縫い、今度はゆっくりと軽い足取りで正面入口の自動ドアから外へ戻ろうとする。 「すまなかったな。許せ。これも仕事のためだ」  そして、やむなく投げ飛ばしてしまった警備員に短く謝罪をすると、入口前で乗り捨てたままになっていたバイク(※バイセクル。自転車)を引き起こしてそれに跨がる。
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