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さて。
そんなこんなでやって来た秋祭りは、地元を離れている面子も顔を揃えて実に賑やかだった。神社の参道には露店も並び、初詣より人出が多かった事も思い出したりして。
「正直、こんなに戻って来るとは思わんかったわ」
俺の同級生にも何人か会ったけど結婚して子持ちになってるヤツも居て。『子どもに日本のお祭りを体験させてあげたくってさー』とか話していた。そして寧ろ親の方が楽しんでいた。
「てっちゃんはゼーンゼン帰って来てくれなかったもんねー」
「………ゴメン」
都会で汚れっちまった俺に、せっせと美味い水と米を与えて垢落とししてくれる双子は愛おしい。そして一緒に呼吸出来る、生まれ育った小さな田舎町の空気までも愛おしい。
「てっちゃんの桃尻に免じて許すよー♡」
「足もシュッとして綺麗だよー♡」
「「その地下足袋に踏まれたいよー♡」
俺も早くその引き締まった褐色の尻に頬擦りの一つもしてやりたいが……年長者のプライドに掛けて口には出さん。
「晒し巻く時思ったけど、やっぱてっちゃん太った?プニプニ」
「……………」
「プニプニ、幸せ太り?ねえねえ」
「……………」
「「俺らと暮らして幸せ?」」
幸せだ。幸せだが言わん。言わんぞ絶対。そして明日からこそはラジオ体操を始めるんだ。身を引き締めるんだ。
「プニプニがなくなるまでやらせん」
「「え〜〜〜!!」」
「喧しいステレオ放送」
肥え太るのは心だけで充分だ。
おまけの秋祭り。
end.
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