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   世の中には同じ顔をした人間が三人いるとは言うが、俺の知る二人は顔も背丈も手の形も大きさも全部一緒だ。声も一緒。  DNAの作用と言うか双生児の不思議と言うか色々あるんだろうが、兎に角一緒。何をするにも一緒。  おまけに恋愛に於ける傾向もたぶん一緒で─────非常にややこしい。 「てっちゃーん!素麺湯掻いたから起きてー!」 「薬味、生姜と山葵どっちがいい?」 「てっちゃんは生姜!」 「お前には聞いてない!」  クソ暑いであろう屋外の気配が障子の向こうから漂っては来るが、エアコンガンガンの客間は過ごし易い。過ごし易い筈なのに面倒臭い。あと煩い。 「「てっちゃーん!」」 折角盆休みに実家に帰って来たのに親は自分達の実家に帰っていた。代わりに幼馴染みのこいつらが(頼んでもいないのに)俺の世話を焼く。  お隣の松本さんちの双子  二つ年下の(リク)(長男)と(ソラ)(次男)である。
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