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   実はてっちゃんの住む街には二人で行った事がある。  学生時代は長期休みの度に帰って来たてっちゃんが、社会に出た途端帰って来なくなって寂しくてどうしようもなくて。  折も折、テレビで『◯◯に残したい昭和・平成の名曲◯◯選!』的な番組で太田ナントカさんの『木綿のハンカチーフ』を聴いてしまい、まるで俺らのテーマソングのようだと切なさがピークに達した末の事だった。  オカンが新米が出来るとてっちゃんに送っていたから住所は簡単に手に入った。オトンの車を借り、go◯gleマップにナビって貰いながら辿り着いた街は結構な『都会』で圧倒された。片側四車線とか五車線とか運転した事がなかった。  ぐったりしながらもてっちゃんのマンションを見つけた時には深夜帯で。コインパーキングを探し周辺をウロウロしてたら、すれ違ったタクシーにてっちゃんが乗っていた。慌ててマンションまで戻ったら、酔っ払い二人(♂×♂)が路チューの真っ最中だった。おいおいマジか都会ってスゲーなと思ったら、片方はてっちゃんでもっとマジかと思った。  都会の絵の具に染まったてっちゃんが可愛いお嫁さんを連れ帰るのは予測出来たけど、お婿さんを連れ帰ったりなんかしたら俺らはどうすりゃいいんだ。 「明らかに酔ってたし……ふざけてたんじゃね?」 「うんそーだ、そーに違いない」 「「アハハハハハハハ………」」  独特な衝撃を抱え逃げるように地元へ戻ったものの、その日のてっちゃんを忘れる事は出来なかった。何故なら見た事がないほど可愛かったからだ。色っぽかったからだ。  仮にてっちゃんがゲイだとして……どっちなんだろう。  男がオッケーならワンチャン自分がよきお相手になれる事も可能?  昔からお互いが考えている事は何となく解ったけど、この時ほどあからさまに解り易かった例はない。俺らは同時に、てっちゃんを『恋愛対象』としてロックオンしたんだろう。
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