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そんな訳でまずは俺、長男・陸がお供となった。何事も空とはほぼ同じなのに、ジャンケンだけは俺が僅かに強い。そしてその事に空は恐らく気づいていない。
その昔『この世にジャンケンほど平和的且つ強制力のある解決方法はない』とてっちゃんは教えてくれた。全くその通りだと思う。
「駅弁買う?」
「お茶とハイチュウでいい……」
夏の陽射しはてっちゃんを消耗させるらしい。システムエンジニアだかプログラマーだかって職業は通勤する引き籠もりだと前に言ってたし(意味不明だけど)、紫外線に慣れていない事は肌を見ても解る。食欲が湧かないのも解るけど、キオスクに並んでいたハイチュウ全種類制覇はしなくていいと思う。
「座席指定間違っちゃったねー。直射日光側だねー。シェード下ろすねー」
「んー……あ……海が見えて来た」
隣のてっちゃんからは甘い葡萄の匂いがする。ハイチュウグレープ味だね。俺はグリーンアップルかシークワーサーが好きだよ。でもどっちかって言うとグミ入りのぷっちょ派だよ。
「なんだよ」
「俺にも一個ちょーだい」
「ん」
これからはてっちゃんの好きな物をたくさん覚える。そして全て空と共有する。新しい情報は即時送信だ。
「単品のその顔ってやっぱり落ち着かんなー……」
「寂しい?」
「そりゃー陸の方だろーが。めっちゃ寂しいって顔に書いてるし」
「……………」
そうか……そうか。生まれた時から、いや、生まれる前から俺と空はニコイチがデフォルトで離れて過ごした事なんかない。今……生まれて初めて空とは別の空気を吸ってるって事なんだ。
自覚した途端に胸がぎゅうって絞られた。
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