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   重怠い体を引き摺り襖を開けると、台所の二人は同時に振り返る。そしてぺっかぺかの嬉しそうな笑顔を向けてくる。大型犬二頭……尻尾をブンブン振り回した犬だ犬。 「てっちゃん目の下にクマ!」 「可愛い顔が台無し!ホットタオル!」 「ソラがしつこいからだ!」 「リクもだろうが!」  二人とも幼い頃からやたらと懐いてくれてはいた。進学で新幹線の距離に転居する際には鼻水を垂らして泣いてもくれた。が………まさか『そーゆー意味』で俺なんぞを好いてたとは昨夜まで知らなかった。  昨夜………寝たんだな俺………こいつらと………所謂ひとつの3[ピ───]  いや、こいつらがどっちが俺を慰めるかでジャンケンとか始めてだな。酔ってたんだわ俺。まともな思考回路じゃなかったんだわ。そんでこいつらが余りにも俺に優しいからつい、つい……………  デッカい皿に盛り付けられた素麺がどーんと載っかったテーブルを前にぼーっと佇んでいるとスマホが鳴った。ラインだ。ぼーっとした頭で、それでも習慣的に開くと先日別れたリョーマだった。 [いつ帰る?俺の荷物取りに行きたいんだけど]  一人暮らしのマンションにいつの間にか増えたリョーマの服やらDVDやら諸々。まあ二年も付き合えば嫌でもそうなるんだろうが、わざわざ取りに来て貰うのもアレだ。顔見んのもアレだ。  少々ガタつく椅子にのろのろと座り返信を送る。努めて事務的に端的に。 [帰ったら宅配便で送る]  それでもう、リョーマとはスッパリ終わりだ。
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