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リョーマの車ギリギリに鼻先を着けたマセラティ・レヴァンテ。
エンジン音は極めて静かだけど何度見ても威圧感は流石だと思う。そして静かに左側のドアが開く。
「りっくん、てっちゃん」
「おじさん!何でこんなとこに!」
「いや実は」
『オトン』がこっちへ歩み寄って来たかと思うとリョーマは逃げた。水色の車はやっぱり猛スピードでロータリーを出て行った。俺とてっちゃんは顔を見合わせて思わず大笑いする。リョーマってあんなモリモリな見た目なのに中身はシオシオらしい。
「おじさん……また車変えたの?黒い車ばっか」
「てっちゃん笑い事じゃないんだよう!空クンが大変なんだよう!」
「大変って」
何となく察しがついたので後部ドアを開けると、中に居た空が膝を抱えてシクシク泣いていた。
「空」
「─────陸ううっ!」
まったくアレだ。
俺と空は離れてたって考えてる事は同じ。俺が寂しいって事は空も寂しいって事なんだ。ただ、俺は隣にてっちゃんが居たから耐えられたってだけなんだ。
「俺やっぱ無理いいい一人で待つとか絶対無理いいい」
「うん……しょーがないなー……」
空の肩をポンポンしながら振り向くと、てっちゃんは眉尻を下げて「だから引き返せって言っただろ」って苦笑いした。
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