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キュルルル。
嘘。こんな時にお腹が、お腹が痛い。時刻は5時50分。自己PRの時間スタート。
僕は、とにかく呼吸を浅くして体調を整え話し出した。
口から声を出した瞬間、僕の中でタイムリミットが動き出した。制限時間8分45秒。
この時間は、お腹の痛みを耐えれる時間。自己PR中に顔を変えずに爽やかな青年を意識して対応に試みるが、僕のお腹は黙っていない。
自己PR中に自分のお腹がストップウォッチとなる。1秒間が小刻みに身体で感じる。
そして異次元の世界を感じだした。頭では空想が浮かび、自分は爆弾処理班となり、爆弾が爆発しないように僕は爆弾のコードを切っているイメージが頭に流れた。
爆弾のタイムリミットまで6分50秒。まだ爆破するには時間があるが、爆弾を爆破させないための緊張感とハラハラが体に走った。
その間、もちろん表情は爽やかに保ち自己PRをしている。
とっその時、面接官の一人は僕の話してる内容を良く思ったのか、表情が和らぎ好印象を持たれたと感じた。
とったぞ、一本。間違いない僕はこの人から一本とった。
その瞬間、僕は言葉に力と確信を抱きだしていた。
どんな戦いにも勝者がいて敗者がいる。僕は今、面接官一人に勝ったと感じた。
だが、剣道なら一本をとれば試合は終了するが面接は違う。そして面接となの試合は続く。5人の内一人だけを打ち取ったと感じた瞬間から油断が生まれだした。
けして面接官にたいしての油断ではない。
身体にたいしての油断だ。気づいた時には遅かった。僕のお腹の痛みは更に増していく。
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