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修行
仙人……それは、修行を重ね不老不死と神通力を手にいれた者のこと。
30歳そこそこの、ひとりの男が呟いた。
「今日から俺は、仙人になるための修行をする」
小さな家の小さな部屋で、髪が伸び無精髭を生やした男は、見た目だけならいかにも仙人のような、その年齢ににつかず初老の男性のような、佇まいだった。
部屋の窓を締め切り、その上遮光カーテンをガムテープで目張りし一切の光を遮断することで外界との接触を絶つかのように男は修行を始めた。
男の1日は奇妙なものだった。
1日といっても、時間の概念はなかった。気持ちよく寝て、ふと目覚めたときが男にとっての朝だった。
朝はまず、修行の一貫として読書した。
書物を貪り読み知識を蓄えた。
昼は瞑想した。座椅子に腰掛け、背もたれに体を預け薄暗い部屋の天を仰ぎ。
夜になるとやはりまだ人間。腹が減る。
そんなときは、ドアの下から漏れる薄明かりに目をやる。
そこには大抵、修行を支える者たちから 差し入れが置いてあった。男はそれらを素早く部屋へ持ち込み、食した。食した。食した。
そしてまた、男は意識が飛ぶまで書物を貪り読み、時に瞑想し、再び"朝"を迎えるのだった。
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