0人が本棚に入れています
本棚に追加
18:00 ファミレスにて。
イクと菜穂は1度家に帰り、時間に合わせて待ち合わせをした。先に入って注文をしようとしていたところに、部活終わりの日向がやってきた。
「わりぃ。待たせた」
「いや、大丈夫。部活終わりにごめん!」
注文を終え、今日あったことを菜穂が日向に一部始終話をした。菜穂の疑問はあの子は誰なのか。ということだった。その間イクはコーラをすすってるだかで特別何か話そうとはしなかった。
「俺も正直詳しいことは分からないんだ。知り合った時にはすでにそういう状況だったんだけど…」
日向はそれでも知っていることを話してくれた。状況はこうだ。
れいはもともと父子家庭だった。親が離婚してお父さんと一緒に暮らしていたらしい。近所には祖母もいたので昼間は祖母の家に帰り、週末は父と2人で過ごす生活を3年くらいしていた。
祖母も優しく別に母がいなくても寂しい思いはなかったらしい。高校も好きなところに行かせてくれた。だけど状況が変わったのは受験も終わって後は卒業だけって時、父親の再婚が決まったんだ。
別に母親が欲しかったわけでもないが、父もまた新しい人とやり直すのは良いことなのではないかって思って快く承諾した。
相手の人もいい人で、父親も幸せそうだった。
問題は母親の連れ子だったんだけど…
「その子があの子なんでしょ。」
日向の説明の途中で割って入ったのはイクだった。
「知ってたの?」
菜穂が少し驚いたように聞いたが、昼休みの件はこのことだったのかと悟った。
「昨日ね。付き合うってなった時に改めて話さないといけないって同じ話をされた。日向の言ってることは、昨日聞いたことと同じだったよ。彼女がわたしの存在を知ったら何をするか分からないから気をつけて欲しいって言われたの。その時にね…」
少し俯きながらイクは続ける
「…その時に、ちょっと弱い子なんだねぇってケラケラ話しちゃったんだよね。それで1日で別れることになっちゃったのかなぁ」
さらに俯くイクに
菜穂と日向は呆れた。
「あんた、どこまでお人好しなのよ!んなわけないでしょ!!あの子が何か仕向けたんだよ!」
「そうだよ。あの子の昔の話聞いてない?
多分あの子…佐江ちゃんね。れいを一目で気に入っちゃったんだ。最初は親の手前もあるしこれから家族でやっていくならって、れいも優しくしたりしてたんだって。だけどそれが勘違いしちゃったみたいでね。れいがいないだけで、情緒が不安定になっちゃったんだ。
もちろんれいが悪いなんて両親も思ってないから一時、おばぁちゃんな家に避難したらしいんだけど…おばあちゃんの家の電話をずっと鳴らすんだって。れいが出ないと 出せ!出せ! って。おばあちゃんも参っちゃうからってれいは自分から家に帰ることにしたらしい。」
そこまで聞かされてなかったイクはさすがに気がついた。イクに危害が加わる前に別れたということに。
「さすがに早かったと思うよ。それだけれいに依存してるんだ。」
「でも、友達とかいるでしょ?」
「再婚で引っ越して来てから中学が変わったんだって。それから友達は作ってないみたい。」
イクはやっと状況が飲み込めたらしく、コーラを一気に飲み干した。
「なんだ!!私が嫌われたわけじゃないのか!ならいいや。」
急にテンションが高めなイクになったもので、菜穂と日向は驚いた。
「いやぁー1日で嫌われることしたかと思ったらさすがに凹んだけど、違って安心したぁ。
とりあえずその佐江って子が原因なんでしょ?そこをなんとかすれば付き合えるんだよね??」
確認するように日向に聞く。
「あ、あ、うん。家でそんなんだから学校でのイクの明るさに助けられるっていつも言ってたし、返事は間違えないと思う。」
日向はイクの吹っ切れ具合に少し押されながらも、こう言うところが救われたんだろうな。と、心底思った。
菜穂はそんなイクを見てニコニコしてイクに聞いた
「で、どうするの?」
「んーどうしもしない。普通にする!」
イクはそのままメニューを見てデザートまできれいに平らげて帰っていった。
最初のコメントを投稿しよう!