私はわたし

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「れいぃー」 イクへの伝言を伝え終わった佐江(さえ)は上機嫌のままれいに報告しにきた。 「あの人に、伝言伝えてきたよー!今日は私との約束の方が先だったもんねぇー」 れいは浮かない顔をしているが佐江はお構いなしだった。何も話さないれいに構いもせずに佐江は話し続けた。かなりの温度差があるもののなぜかれいは邪険にもせずに、だがしかし話も聞かずにただ時間だけが過ぎていく。 ホームルームが始まるチャイムがなったので佐江は自分の教室へと帰っていった。 「はぁ」 れいはため息をつく。こんなはずではなかったのに...佐江がまさかこの学校に入学するなんて思ってもいなかった。家だけ我慢すればいいと思っていたのに...朝のホームルームはれいの耳には入ってこなかった。ただひたすら既読のついたlineを見ている。イクに送った別れのメッセージを今すぐ取り消したい。取り消したところですでに既読になっているのだが、なかったことにしたい。いやむしろ、昨日の告白がなかったものにならないだろうか。 イクとの時間はれいにとっては本当に楽しいものだったのに...付き合えることになってれいも本当に嬉しかった。なのに... 悲観して、頭を抱えているところに日向(ひなた)が現れた。 「れい、さっきの何?」 心配そうにれいのことを見ている。日向は1年の時からの友達で、2年間同じクラスである。昨日のイクとの事も、すぐに連絡をしたが、まだ、今の状況を説明仕切れていない。それほどれいにとったらショックなことだったのだ。 「ってか、もしかしてあの子...」 「そう...」 「そっか。まさか同じ学校か...。」 「ため息しか出ない。同じ制服着てる時は本当にびっくりした。家では話さないようにしていたんだ。」 「イクは?」 「...別れた。」 「は?!お前どーすんだよ!!」 日向は今にも殴りかかりそうな勢いでれいの胸ぐらを掴んだ。 「どーもこうもねーだろ!!!仕方ないんだ!!!」 逃げるわけでもなく、日向に向かったれいに対し、日向の方が少し怯んだようだった。 「ごめん。」 「いや、日向が謝ることじゃない。でも、確かにこのままじゃいけないのはわかってる。でも、まだ何も考えられないんだ。」 「...なんとかしようぜ。」 また、巻き込んでしまう。済まない。と、謝ろうとしたが辞めた。 謝っても日向は関わってくれるだろう。 その日の放課後 れいは下駄箱でイクを見かけた。声をかけたかったが、今日一日顔を合わせなかったし、結局返信もこなかった。 声をかけたところで、イクの笑顔が見れないなら仕方がない。そのまま帰ろうとしたその時、佐江が近くにいることに気づいた。 「...まだあの人のこと見てるの?」 「いや、ぼーっとしてただけたよ。帰るんだろ。」 そう言うれいに対して返事はせずに佐江はイクのところへ向かった。 「お、おい!どこいくんだよ!!」 必死に止めようとするが止まらず、結局イクの前に出て行く佐江。 びっくりするイクを他所に 「私たち今から同じ家に帰るの!24時間一緒なの!!邪魔しないで!!」とだけ言い残し、れいの腕を取って帰ってしまった。 イクはキョトンとして何もいえなかった。隣で一緒に聞いていた菜穂も何が起こったのか分からないでいた。 2人は1日分からないことだらけですでにれいに関してはパンク寸前だった。先に動いたのは菜穂である。 「もぉー!!我慢できないから日向に聞くからね!!」 4人は一年生の時は同じクラスだった。 イクとれいが仲が良かったので、4人でいることが当たり前にはなっていた。しかし、2年になって、クラスが分かれ会う機会がなくなり今回の件も聞けずじまいだった。 「うん。わかった。じゃぁいつものファミレスにいるから18時ね。」 菜穂は部活前の日向と連絡が付いたようで、部活終わりに会う約束をしていた。 少し放心状態だったイクもいくらか落ち着いてきた。 「菜穂…ごめん」 精一杯の言葉だった。
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