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「…久しぶり」
「…うん」
「…元気だった?」
「ぼちぼちかな」
問いかけにぽつぽつと反応する。
生ぬるい風が黒髪を撫でる。
「ちょっと、痩せたようだけど」
青と白のストライプのワンピースから伸びる彼女の腕は、どこかしらほっそりとしていた。表情も記憶の中のものよりシャープに見える。
「ちょっと病気しちゃってね」
「……沙織が病気するなんてこと、あるんだ」
「なにそれ。あたしだって病気になることくらいあるわよ」
顔をあげた彼女は昔と同じようにぷうと頬を膨らませる。
「自分だって、右腕に包帯巻いているくせに」
「ああ、ちょっと車にぶつかっただけ」
「太一は昔からよく物にぶつかってたよね」
「そうだっけ?」
「校舎の3階の窓から見下ろそうとして開いてない窓ガラスにぶつけたやつとか」
「ああ、たしかにあったなそんなの。でも、沙織が下から急に呼んだから」
「そうやって、すぐ人のせいにする」
私は彼女を見つめた。
彼女も私を見つめる。
しばらくして、ふふっと、彼女から笑みが溢れた。
「懐かしいな」と彼女。
「懐かしいね」と私。
「変わんないな」と彼女
「変わんないね」と私。
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