ずっとこの手は離さずに

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沙織のことは、ただの昔からの友達としか思っていなかった。 いや、違う。 友達と思い込むようにしていたのが真実だ。 年を追うごとに彼女は女らしくなった。 童顔だった顔はだんだんと大人びて、くりんとした目はより可愛らしくなった。 ベッドの上で肩を並べて漫画を読み合う横で、Tシャツのたるみから見え隠れするやわらかなそれに緊張することが何度もあった。 なんの気遣いもいらない、趣味も似ていて一緒に楽しい時間を過ごせる。 にかっと笑う顔も私好み。 付き合うなら、私の理想の彼女だった。 その日から私たちは付き合うことになった。 けれど、あらためて彼氏彼女という関係をはじめるには、慣れすぎたし近すぎていた。 友達という関係からうまく抜け出せず、何かがひっかかってギクシャクしていた。 今思えば、一種の気恥ずかしさだったんだろう。 「好き」という気持ちを伝えること、「好き」という想いを受け止めることが、うまくできなかった。 なんとか手をつなぐことまではできたけれど、そこまでだった。 バレンタインデーから半年たった高3の夏休み。 今日と同じように暑い日差しが照りつけていた。
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