しとしと雨の降る日には。

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 昔から、『七夕さん』が好きだった。大通りからアーケード街を抜けて、公園までメインストリートを埋め尽くす色とりどりの巨大な吹き流し。その間を街中の人たちが4列に並んで踊りながら進んでいく。背伸びをして見ても、後ろにはずっと人が並んでいて、曲に合わせて全員が腕を上げてくるりと回り、前に進んでいく。  熱気が好きだった。みんなで集まって遊んでいるんだという楽しい雰囲気がたまらなく好きだった。風が吹き抜け、囃子立てるような風鈴の音が好きだった。  何よりも大好きなのは、願い事を書いた短冊を折鶴に吊るすこと。何千、何万と数え切れないほどの折鶴が重なり、空に吊り上げられているみたいにゆらゆらと揺れている。ここで祈った願い事は、いつか本当に叶うような気がした。  学校の夏休みのちょうど半ばあたり、毎年8月に開催される七夕さん。毎年、毎年大好きだった七夕さん。だけど、今年はもっと好きになれる。たぶん、そうきっと。  そう思っていたのに、大通りもアーケード街も公園ですら、どこも空っぽだったんだーー。
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