2人が本棚に入れています
本棚に追加
0
赤い炎が揺れている。
どこだろうかと見回そうとするけれど、その炎以外には風景はなく、ただ墨で塗られた闇が貼り付いているだけだ。
どうしてだろうか、視界の中央で揺らめく炎はまるで熱くなく、ただその場に電灯のように吊り下がっているだけだ。
「何を、言いたいんだ……?」
いるはずもない誰かに問いかける。その時まで、自分が独りだとは気付かなかった。
「全てを呑み込もうとするのか……」
それとも、全てを排除したいのか、お前は。
混沌すら生温い絶無のなか、俺は朧な感覚で腕を伸ばした。
最初のコメントを投稿しよう!