未来の夏。

3/8

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 急にお父さんが「山で水浴びをしたい」だとか言って、1時間くらい車を走らせてどこぞの山に連れて行ってくれた。  普段お父さんは、近所のショッピングモールくらいしか連れて行ってくれない。だから、こんなに遠くの場所まで連れてきてもらえることが嬉しくて、私は上機嫌に足をプラプラさせていた。  山に着いたら車は駐車場に止めて、いい感じのところを探しに山を登った。お父さんの大きな背中を見失わないように追いかけていたら、ちょうど私たちが荷物を置けそうなスペースがある岩が見えたので、そこに荷物を置くことにした。その場でワンピースを脱いで、下に来た水着を(あらわ)にさせた私はお父さんを見た。するとお父さんは、膨らませた浮き輪を私の頭から通した。  これは「川に入っても良い合図」だと分かった私は、お父さんにありがとうと言って川の中に入った。  その時の、気持ち良さが忘れられない。 「山に行きたいなー」  私の願望が口から出たかと思い口に蓋をしたが、私の口は閉じたままで動いた形跡はなかった。ならば何処から、と隣の席を見てみると私と同じような格好をした人がいた。  周りは授業中だから黒板やノートを見ていて、私たちを見ていなかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加