勇者とサブヒロインは同居する 勇者side

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勇者とサブヒロインは同居する 勇者side

 俺は昨日婚約者が出来た。今度また2人で食事をする約束をして初の顔合わせが終わった。  貴族のご令嬢、しかも王族に継ぐ権威を持っている公爵令嬢と聞いていたから、もっと礼儀とかちゃんと守らないといけないような、肩肘張ったお付き合いをする事になるものだと思っていたから、内心(面倒だなぁ…)って気持ちもあったんだけど。  礼儀を先に破ってくれたおかげで、気持ちは幾らか楽だ。  これなら今度の食事会もさほど億劫にならない付き合いをしていけるだろうし。何より、もっと高慢というか、プライドの高い高貴なオーラで相手を諫めてしまう感じを想像してただけに…あの真っ赤になって、頭の中グルグルしてそうな姿が何というか、和んだな。 「おーい、昨日の顔合わせどうだった?」  そう言って部屋に入ってきたのは、魔王討伐のパーティー仲間、弓使いのオルフェだ。 「オルフェ。勝手に入ってくるなよ。」 「何度も門先で声をかけたさ。誰か雇えよ。この家の主人は君だろう。」 「…この屋敷広過ぎなんだよな。何室あるんだよって。 要らないって言いたいけど、陛下から貰ったものだし、色々不味いだろうなぁ。 よし、此処は誰かに管理を任せて別の所探すか。」 「まぁレイヴンは勇者だから、身軽な方が良いもんな。 そこんとこはほら、レイヴンの婚約者になった方に相談したらどうにかなるさ。 そうそう!どうだった?〝戦場に舞い降りた天使〟様は。」 「戦場に舞い降りた天使?」 「あぁ、聞いた話だとヴィクレシア公爵令嬢は、先日突如魔物に襲われた自領を守り傷ついた兵士達を医療人に混ざって看護していたそうだ。それで助からない筈の者が多く生かされた。 普通の貴族の令嬢なら安全な所でお茶を飲んでりゃ良いのにな。治癒師の勉強熱心だった公女様に多くの兵士が救われたらしい。 だから〝戦場に舞い降りた天使〟。」 「へぇ、それだけ聞くと何か俺とは違って意識高そうだな。」 「他国に引き抜かれたくない勇者に当てがわれる人物な訳だから、やっぱり良い子を見繕われてるんだろう。 でも、レイヴンはそう言う肩書とか名誉とか興味ないのも固っ苦しいのも嫌いな事、僕は知ってるしな。 そこまで善行重ねたのに気の毒な天使様だよなぁ…」 「勝手に決めるな。」 「お?何。脈あるの?」 「そうじゃなくて…。」 「〝そう言う意図で当てがわれた相手は萎える〟と言ったなかった?」 「〝萎える〟とは言ってない。〝そんな気にならない〟と言っただけだ。」 「同じじゃん。」 「…良いから、オルフェとは明日王城で会うだろう。今日俺は非常に疲れてるんだ。早く帰れよ。」 オルフェをぐいぐい押し出して、部屋から出そうとした時、扉の後ろに立っていた人物に動きが固まった。  両手を胸元に握り、アメジストの瞳が視線をこちらに向けている。勇者とオルフェの話を聞いていた事がその視線の動揺から伝わってきた。 「ユウフェ…殿。」 勇者がその名を口にすると、反応に困っている勇者達に気を使ったのか、声を掛けてきたのはユウフェだった。 「あ…あの!      すみません、昨日説明を忘れてまして。 門先で声を掛けたのですが案の定誰も出なくて…。」 「?説明?」 「私、婚約者として、この邸宅を維持するべく此処に住まわせてもらうのです。公爵家から人材も数人連れてきました!勇者様はお屋敷の事は考えなくとも大丈夫です!」 「?」 「今夜は勇者様も此処でお泊まりになるとは存じてますが、やはり挨拶もなくと言う訳には…「いやいや、待って。」 勇者は話について行けずに思わず遮った。 「住むって、此処に?」 「はい!なので勇者様は此処のことを気にせず、明日に見つける別宅への準備をしてください!」 「俺が別の所に住むのがわかってても此処に残るの?」 「はい、実は此処を放っておくと、後々勇者様に良く無い状況になるのです。ですが、安心してください!私が此処を管理しますので!勇者様はどうぞご自由にしてください!」
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