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主観
見たことのない数式が並ぶその文書。
手元には、金属質なペンと何も書かれていない紙があった。
もうこの部屋から、まるきり24時間は出れていない気がする。
僕は、いまだかつてないほど緊迫していた。
いや、正確には焦っていた。
目の前の数字の意味がわからなければ、僕は外には出ることはできないだろう。
どうにかしなければいけない。
そんなことはわかっている。
しかし、ここには優しく教えてくれる先生も友人もいるわけがなく、この身一つで考えるしかない。
窓の外を見ると、いつの間に暗くなったのか、既に夜を迎えていた。
時間が止まればいいのにと、願うがどうにも時計の針は止まってくれない。
むしろ、見れば見るほど早まっている気がしていた。
タイムリミットがやってくる。
そう思うほど、焦燥感が強くなり、考えることが疎かなっていった。
加えて、休ませていなかった体に倦怠感がどっと押し寄せる。
そんな状態の僕が、睡魔に飲まれるのは簡単な話であった。
……そのあとはよく覚えていない。
自ら、その書類らを片付けて寝床へと向かったのだろうか。
翌朝、僕は頭を抱えつつ記憶をたどる。
そこにあるのは、昨夜抱えていた焦燥感よりも大きな喪失感であった。
思い返す中で、ふと僕の中に蘇ったけたたましい警告音。
それで一度僕は目が覚めたことを思い出した。
嗚呼、僕はなんてことを。
そのあと、僕は無機質な警告音に対し「あと5分」と呟き、リセットボタンを押したのだ。
例えその行為が、昨晩までの努力を踏みにじったとしても、僕は目先の安らぎを求めた。
午前十時二十二分、僕は自室で僕のしでかしたことを、悔やんでいた。
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