【 第四話: 教祖:堂尊の野望 】

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【 第四話: 教祖:堂尊の野望 】

 この『堂尊』が掲げた『アンドロイド規制法案』は、瞬く間にマスコミによって全国に知れ渡り、宗教法人:AACの信者も急激に増えていき、全国へ支部が広がっていった。  国政に与える影響と国民に与えた影響は、凄まじかった。  一気に堂尊の株は上がり、国民の無作為抽出による事前調査でも、堂尊が国政選挙で勝利する確率が圧倒的に高い数字を示していた。  連日、堂尊の冷静な訴えは、若者たちを中心に広まっていき、街頭演説をすれば、数千人規模の観衆が集まるまでになっていた。 『今、世間では「アンドロイドによる殺傷事件」や「アンドロイド狩り」などの悲しい、痛ましい事件が連日のように発生しています。その中で、私たちの生活の安全が今、脅かされている状況にあります。国民の皆様が安心して、安全な生活を送って頂けるように、この「アンドロイド規制法」を一刻も早く制定し、危険のない安心・安全な世の中にしていくことを、私は皆様にお約束致します』 『わぁーーーーっ!! 堂~尊! 堂~尊! 堂~尊! ……』  『堂尊フィーバー』は凄まじかった。  堂尊の開発したスマホアプリも、連日のように発生している『アンドロイドによる殺傷事件』や『アンドロイド狩り』を受けて、ダウンロード数も一気に増え、急激に国民に広まった。  また、新しく開発された地図上でアンドロイドの位置が特定できる『アンドロイド・サーチ』のリリースもされ、これによって、ゲーム感覚でアンドロイドを探す若者が急増した。  若者たちは(こぞ)って、堂尊の宗教団体:AACに入信し、『堂尊様(どうそんさま)』という言葉が、いつしか流行語になっていった。  また、その流行語にあやかって、女子中高生に『堂尊様グッズ』なるものまで出始めて、一気に堂尊の名は日本全国に知れ渡った。  これらの追い風を受け、『堂尊フィーバー』は益々過熱化し、  ――遂に、堂尊は国政選挙で大勝利を収めた。  また、堂尊だけではなく、堂尊が代表兼教祖を務める宗教団体:AACの幹部たちも同様に、選挙に立候補し当選を果たし、『AAC党(エーエーシーとう)』まで結成してしまったのだ。  このニュースは、選挙速報や翌朝の新聞・雑誌・テレビ番組でも取り上げられ、日本国民に大きな衝撃を与えた。 『堂尊さん、当選おめでとうございます。圧倒的な大勝利という形でご当選されましたが、今の率直なお気持ちをお聞かせ下さい』 『どうもありがとうございます。これも国民の皆様のご支援のお陰だと思っております』 『堂尊さんの宗教団体の幹部の方々も同時に当選されていますが、噂では、「AAC党」を結成するとまで報じられておりますが、本当でしょうか?』 『はい、そのように考えております』 『今後、国会議員としてどのような活動をしていかれるのでしょうか?』 『はい。選挙前に掲げました「マニュフェスト」通り、「アンドロイド規制法」の制定に尽力していきたいと思っております』 『いよいよ、この法案を国会に出されるということですね?』 『はい。国民の皆様に安心で、安全な生活を送って頂けるようにする法律となりますので、一刻も早い法整備をしたいと考えております』  堂尊は、当選後もあくまで冷静だった。  その落ち着いた態度は、宗教法人の教祖だけに留まらず、国会議員の誠実で実行力のある人柄として、国民には映っていたようだ。  この堂尊が、他の候補に大差をつけて当選したことに、俺は正直焦っていた。  マジカが旧型アンドロイドであるために、この『アンドロイド規制法』が成立してしまうと、彼女は国に没収されてしまうからだ。  また、俺が立ち上げた『旧型アンドロイドの修理ベンチャー』への影響も避けられない状況になる。  俺は悩んでいた。 「ねぇ、ヒロシ。これから私たちどうなっちゃうの?」 「うん……、俺にも分からない……」 「マジカ、国に回収されちゃうの?」 「このまま、堂尊の『アンドロイド規制法案』が国会を通過すれば、そうなる可能性が高い……」 「もし、マジカが国に回収されちゃったら、その後マジカはどうなるの?」 「恐らくは、国によって、破壊されることになると思う……」 「破壊……? マジカいや! ヒロシと離れてもう会えないなんて、マジカいや!」 「大丈夫、俺がマジカを最後まで守るから。だから、安心して」 「うぅぅ……」 「俺が守るから……、マジカを守るから……」  マジカは、堂尊の掲げる『アンドロイド規制法』を恐れていた。  俺も、この法律が施行されれば、俺たちの身の危険は避けられないと考えていた。  そんな時、やつらは、ついに俺たちの家をつきとめて、やってきた。 『ピンポーン』 「んっ? こんな夜遅くに、誰だろう……?」
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