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 私は今、残り5分の戦いを繰り広げている。  某新人賞に応募する新作長編、 『冴えないOLの私が神様の誤爆で異世界の第五王女に転生したら前世のスキルを活かし豪華な生活とイケメンに囲まれてご満悦です!』  の、投稿フォームに打ち込む作業をしているのだ。  〆切は、今夜23時59分59秒。デジタル時計は54分を示し、刻一刻と秒が刻まれてゆく。  インターネットからの新人賞応募が容易にできるようになった昨今、投稿は非常に楽になった。  大量の原稿用紙を買ってきて、インクで手を汚しながら書き、400枚の用紙を留められるダブルクリップと、それが入る封筒を探し求めてホームセンターを彷徨い、閉館ぎりっぎりの郵便局に飛び込んで、〆切当日の消印を押してもらう。そんな苦労はもうしなくていいのだ。  おっと、そんなことを言っていると、私の年齢がバレてしまう。くわばらくわばら。
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